『オズのふしぎな国』(ライマン・フランク・ボーム)

完訳 オズのふしぎな国 《オズの魔法使いシリーズ2》

完訳 オズのふしぎな国 《オズの魔法使いシリーズ2》

復刊ドットコムのオズ第2巻。原題は『The Marvelous Land of Oz』。ハヤカワ文庫版では『オズの虹の国』という邦題になっていました。
ドロシーは登場せず、悪い魔女のモンビばあさんに育てられている少年チップが2巻の主人公となります。モンビばあさんの魔法で命を吹き込まれたカボチャ人形を仲間にして、チップは家出を決行し、かかしが治めるエメラルドの都へ旅立ちます。そのころエメラルドの都では、編み棒で武装した少女の集団による革命が起きていました。騒ぎに巻き込まれたチップは、かかし王らとともに、助けを求めに北のいい魔女グリンダの元に行くことになります。
戦況が悪くなると少女たちは、男性に恨み言を言うのではなく、「母さんのいいつけどおり、ベッドをととのえたり、お皿をあらったりするのなんていやだわ」と嘆きます。そして、革命を鎮圧したのはオズでもっとも社会的成功を実現している女性、つまり名誉男性のグリンダです。世代や階層で女性を分断して、性差別を拡大再生産するすばらしい仕組みが解き明かされています。
というわけで、オズの2巻はフェミニズム革命とその挫折の物語です。これが1904年の刊行だと考えるとすごいですね。