『人生なんて無意味だ』(ヤンネ・テラー)

人生なんて無意味だ

人生なんて無意味だ

デンマークの児童文学。テーリングという小さな町の中学一年生ピエールが、スモモの木の上に座って「人生なんて無意味だ」という説法をはじめます。いわく、「ものはみな終わるために始まるんだ。お前たちも生まれた瞬間から死に始めているのさ」「地球は四十六億年だけど、お前たちはせいぜい百歳にしかなれないんだぞ!」。ピエールの行動を許せない級友たちは、人生の意味を証明するために、自分たちの大切なものを広場に積み上げて「意味の山」を築こうとします。
この作品の怖さは、人生の無意味さを説いているところにあるのではありません。クラスという小集団が暴走していく様子を描いているところが怖いのです。『蝿の王』の系譜に連なる作品と理解すべきでしょう。
意味の山に投げ込むものは、その人にとって最も大切なものでなくては「意味」がありません。意味の山建築はやがて、気にくわないやつの大切なものを指摘して、それを捨てさせることによって嫌がらせをする活動になっていきます。意味の山に放られるものはどんどんエスカレートしていって、中には精神を病んだようになってしまう子供も出てきてしまいます。
蝿の王』と違い、この作品の子供たちは地理的に社会から隔絶されているわけではありません。社会の中にありながらも、小集団内の空気に流されて行動を先鋭化させてしまうのです。ここに不気味なリアリティがあって、ぞっとさせられます。