『オズのオズマ姫』(ライマン・フランク・ボーム)

完訳 オズのオズマ姫 《オズの魔法使いシリーズ3》

完訳 オズのオズマ姫 《オズの魔法使いシリーズ3》

オーストラリアに行くために船に乗っていたドロシー・ゲイルは、嵐でニワトリ小屋と一緒に海に投げ出されてしまいます。饒舌なめんどりのビリーナとともに漂流したドロシーは、またも不思議な国にたどりつきます。
優れたファンタジーには、観光要素が重要です。たとえば、『指輪物語』なんかはまさに中つ国観光案内の本で、風景や建造物、珍しい動植物を眺めているだけでいくらでも時間をつぶせてしまいます。
オズもまた、観光要素が素晴らしい作品です。九死に一生を得たドロシーがまず見つけるのが、弁当箱がなっているランチの木。葉っぱが紙ナプキンになっているというサービスまでついています。この即物的な欲望をかなえてくれるところがいいですね。
でも、ほっとしたのもつかの間、今度は手足に車輪がついたホイーラーという奇妙な生き物の群れに襲われてしまいます。そのほかにも、一定時間ごとにハンマーを振り下ろす鉄の巨人など、めずらしいみものが満載。サカイノビーの気の抜けたイラストがだんだんオズの空気になじんできて、観光要素に華を添えています。
3巻では、2巻では出てこなかったドロシーが再登場してオズマ姫と出会い、機械人形のチクタクも初登場。役者が揃ってきて、いよいよ本格的にオズの世界が広がっていきそうです。