『ネジマキ草と銅の城』(パウル・ビーヘル)

ネジマキ草と銅の城 (世界傑作童話シリーズ)

ネジマキ草と銅の城 (世界傑作童話シリーズ)

1000年ものあいだ国を治めていたマンソレイン王は、年老いてあと一週間の命との診断を受けました。王の主治医であるまじない師は、薬となるネジマキ草を探すために旅立ちます。王の命を延ばすためには胸がわくわくする物語を聞かせなければなりませんでしたが、銅の城に唯一残っていた家来のノウサギはすでに知っている物語を語り尽くしていました。まじない師は旅先で出会った生き物たちに銅の城に行って王に物語を語るように依頼します。こうして、銅の城には毎日に様々な生き物(リスやヒツジやライオンや、ドラゴンまでも)が訪れ、とっておきの物語を披露するようになりました。
千夜一夜物語のシェヘラザードとは正反対で、自分が殺されるのを防ぐためでなく、相手の命を長らえさせるために物語を語るというのがユニークです。物語は人の命の糧になるという、作者の強固な物語に対する信頼が感じられます。
パウル・ビーヘルは枠物語の名手として知られていますから、作品のおもしろさについては多くを語る必要はないでしょう。かっちりと設計された物語の美しさを堪能できます。
イラストは村上勉。様々な生き物たちが彼の絵柄で見られるのも嬉しいです。