『妖怪一家 九十九さん』(富安陽子)

妖怪一家 九十九さん

妖怪一家 九十九さん

雑木林に住んでいた妖怪たちは、この林をつぶして団地を造ろうという人間たちの計画を聞いて激怒します。ヌラリヒョンが妖怪の代表として市役所に抗議に行ったところ、さんざんたらい回しにされた末に地域共生課という部署に案内されます。そこで役人に丸め込まれて、住環境を提供してもらうかわりに団地運営の手伝いをさせられることになります。こうしてヌラリヒョン・やまんば・見越し入道・アマノジャク・一つ目小僧・サトリの一家6人は、化野原団地B棟地下12階の住人として暮らすことになりました。
妖怪と人間の共生が、きれい事ではなく功利主義に支えられているのが面白いです。人間を食べようとする荒っぽい妖怪は、人間を食べるのは健康に悪いという論理で説得されます。そして人間は、妖怪を治安維持のために利用するのです。おそるべきリアリズムです。
気になるのは、この作品の舞台がいつの時代なのかということです。登場する固有名詞をみるとそれほど昔の話とは思えないのですが、最近の話だとすると3万人規模の団地建造が計画されるというのは考えにくいです。