『給食室の日曜日』『とっておきのはいく』(村上しいこ)

低学年向けでは圧倒的な安定感を誇る村上しいこの新作を2作紹介します。

音楽室の日曜日 (わくわくライブラリー)

音楽室の日曜日 (わくわくライブラリー)

子供たちのいない日曜日の小学校で起こる騒動を描いた「日曜日」シリーズの新刊です。給食室の料理器具たちが、「ほうちょうステ」というメモを見つけてしまいます。捨てられる運命のほうちょうを気遣う調理器具たちの、ばかばかしくも厚い友情の物語が繰り広げられます。
とっておきのはいく (PHPとっておきのどうわ)

とっておきのはいく (PHPとっておきのどうわ)

『とっておきの詩』の続編。ゴールデンウィークの宿題として動物をテーマにした俳句を詠むように命じられたつよしは、動物園に行って課題に取り組みますが、なかなかうまくいきません。やっとのことで「ぞうさんも しょうがつぞうに 食べるかな」という作品をこしらえたところ、頭の回転の速い友達のみさきから、「だじゃれは いいけど、なにを つたえたいの」と手厳しい批評を受けてしまいます。
さて、詩はみさきのいうように伝達のためにつくられるものなのでしょうか。つよしが俳句のコツをつかんでくると、つよしとみさきの俳句合戦はギャグの応酬になります。そこにはもはや「つたえたい」内容などなく、コミュニケーションのためのコミュニケーションになってしまいます。
では、こうしたコミュニケーションの結果なにが生み出されるのか。村上しいこと画家の市居みかは、おそろしいキメラを創造してしまいました。このシリーズからは、学校で出された詩の課題に悩む子供のを姿を通して、日常の言葉と文学の言葉の正体を探ろうという、壮大な野心が感じられます。