『雪ぼんぼりのかくれ道』(巣山ひろみ)

雪ぼんぼりのかくれ道

雪ぼんぼりのかくれ道

子供がウサギについていって不思議の国に迷い込み、なんだかんだあって現実に帰還する、オーソドックスな児童文学です。この作品のよさは、子供を異世界に追い込むまでの過程の残酷さにあります。
両親と仲違いした果奈は、ひとりで祖母の家に行きます。ところが頼りの祖母は耄碌していて、果奈のことを認識できません。そこで登場するのが、バケツに入れた雪をひっくり返して穴を開けてこしらえる「雪ぼんぼり」です。果奈は雪ぼんぼりを無数につくる賽の河原的労働に打ち込みます。その雪ぼんぼりが異世界への道となるのです。子供に自らの手で道をつくらせるのがいやらしいですね。
こうした過程を丁寧に書き込んでいるので、よるべない子供の気持ちをすくい取ることに成功しています。