『願いのかなうまがり角』(岡田淳)

願いのかなうまがり角 (岡田淳の本―ファンタジーの森で)

願いのかなうまがり角 (岡田淳の本―ファンタジーの森で)

おじいちゃんが孫にホラ話を語って聞かせるスタイルの短編集です。
第1話の「雲の上へいった話」は、おじいちゃんがアパートで孫とふたりで雨を眺めている場面から始まります。おじいちゃんは孫の「雨、ここらへんだけふってんのん?」という疑問に対し、海でも山でも降っていて、海ではクジラの子が、山ではイノシシの子が同じようなことを自分の家族に聞いているだろうと適当なことをいいます。孫は思いつくままに、雨はどこから降るのか、雲の上にはなにがあるのかと疑問を広げていきます。どこに話が転んでいくかわからないライブ感がいいですね。
ここから本題の「雲の上へいった話」につながっていきます。おじいちゃんは自力で雲の上を目指したというのですが、その方法というのがなんと雨の中を泳いで天に向かっていくというもの。「フングリコングリ」もそうでしたが、岡田淳は合理的(?)な空を飛ぶ方法を考案するのがうまいです。
この作品集には落語のようなオチのついた話が多いのですが、落とし咄として特に秀逸だったのは「チョコレートがいっぱい」です。おじいちゃんがもてまくって世界中の人々からバレンタインチョコをもらうという壮大なホラが、最後の最後でしみったれたレベルに落ちてしまう落差がすばらしかったです。