『お嬢様探偵ありすと少年執事ゆきとの事件簿4 秘密の動物園事件』(藤野恵美)

本格ミステリシリーズ「お嬢様探偵ありすと少年執事ゆきとの事件簿」の第4巻。今回は学園に現れた謎の生物の正体を探ります。
藤野恵美にはミステリ外の代表作として、健全な懐疑主義の大切さを真摯に説いて科学者やSF作家から絶賛された「七時間目」シリーズがあります。糞を調査したり毛を採取したりといった地道な作業から未確認生物の正体を論理的に探っていく本作の展開からも、「七時間目」のスピリットが垣間見えます。本作の前半部分は「七時間目」シリーズ第4作『七時間目のUMA講座』として読んでもいいかもしれません。そういえば本作には、『七時間目のUFO研究』の重要な登場人物の名前がちらっと出ていました。
そして後半は、頭のおかしい人が人工的な楽園を造るという乱歩ワールドになります。『パノラマ島奇談』や『孤島の鬼』、『盲獣』を髣髴とさせるまがまがしさ。やはりミステリにはこういう退廃的な美が必要です。
ありすが「名探偵」という言葉を忌み嫌う理由が明らかになったり、ゆきとの両親が亡くなった事件の手がかりが出てきたりと、シリーズの本筋もだいぶ動いてきました。続きが楽しみです。