『スクールガール・エクスプレス38』(芦辺拓)

スクールガール・エクスプレス38 (YA! ENTERTAINMENT)

スクールガール・エクスプレス38 (YA! ENTERTAINMENT)

このところ講談社YA! ENTERTAINMENTが謎の女子校強化運動をおこなっています。6月発売の『レガッタ!』、7月発売の『100%ガールズ』に続いて8月に出た3冊目の女子校ものが、この『スクールガール・エクスプレス38』です。夏休みの終わりに読むのにふさわしい、爽快な王道冒険小説でした。
海外体験のため南シナ海にある島国にやってきた女子高生38人が、革命騒ぎに巻き込まれて安全な場所を求め逃げ回る話です。一番大きな少女たちのグループは、なんと機関車を見つけて、豪快に逃走劇を繰り広げます。また別のグループはお化け屋敷のような古城に迷い込んだり、機関車から問題児3人組が自転車で抜け出して終盤の大逆転への布石になったりと大忙し。
よくできたアミューズメントパークのような作品です。気配り上手な支配人の芦辺拓は、ジェットコースターにお化け屋敷に秘境と、次々に楽しいものを繰り出してきます。彼の本業は本格ミステリですから、密室での人間消失トリックやバラバラ死体(?)なども用意して、ミステリファンももてなしてくれます。
これだけたくさんのおもちゃをつめこみつつ、さらに38人ものキャラクターを統率して、これしかないと思えるような大団円に収束させてしまった著者の豪腕には恐れ入るしかありません。
物語が始まってからずっと少女たちは走り続けているので、彼女たちについて行った読者も読み終えたときに息切れを感じさせられます。でもそれは、いい運動をした後と同じような心地よい息切れのはずです。