『グッバイ マイ フレンド』(福田隆浩)

グッバイ マイ フレンド

グッバイ マイ フレンド

水の事故で亡くなったタクヤをめぐるエピソードが、クラスメイトたちや担任の先生の視点からそれぞれ語られる、連作短編集です。
おもしろかったのは第2話の「写真集」です。タクヤは生前仲間と一緒にアイドル声優の写真集(小学生にとっては立派なエロ本)を購入していました。隠し場所に困ってタクヤが秘密の場所に保管したのですが、彼が亡くなったため行方がわからなくなってしまいました。のこされた仲間たちは、隠し場所を推理し、奪還するために危険な冒険を繰り広げます。完全におバカな話なのですが、死という背景があるため不謹慎さでギャグに磨きがかかり、かつ泣ける内容になっています。
いろいろな人物の視点からタクヤについての思い出が語られますが、一致したタクヤ像は出てきません。これは当然。死者は非常に寛容で絶対に反論することがないので、おのおの勝手に自分の思いの依り代にすることができるからです。しかし、依り代になるのは死者だけではありません。連作を通してくだんのアイドル写真集が重要なアイテムになってきますが、第4話のエピソードではタクヤが彼女を生きながらに神にしていたことが明らかになります。ここで、福田隆浩の前作『公平、いっぱつ逆転!』がアイドルをプロデュースする話であったことを考え合わせると、彼が人間の相互理解の不可能性という難しいテーマに足を踏み入れてしまったように思えます。