『雨月物語』(金原瑞人)

日本の古典を題材にした翻案のシリーズ、「ストーリーで楽しむ日本の古典」シリーズが始まりました。初回はこの金原瑞人による『雨月物語』と石崎洋司による『平家物語』、今後は越水利江子の『落窪物語』や名木田恵子の『百人一首』などの刊行が予定されています。講談社が90年代後半に出していた「痛快 世界の冒険文学」のような思い切った翻案のシリーズになりそうで、今後の展開が期待されます。
金原瑞人による『雨月物語』は、現代の高校の文芸部員が1話ずつ『雨月物語』のストーリーを自分なりに紹介するという形式になっています。「菊花の約」をBL解釈する少女がいたり、「夢応の鯉魚」を世界の神話と比較して読み解く帰国生の少女がいたりと、語り手も個性豊かです。
この作品やポーの「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」の翻案など、金原瑞人の最近の仕事をみると、彼は「語り直す」という営みについて積極的に語ろうとしているようにみえます。この作品も、自分の手札を公開して文筆業を志す子供たちへヒントを提供しようという意図が推察されます。
しかしこの、悲劇的な予想しかできないようなオチはどう理解したらいいのか……。