『マジックアウト2 もうひとつの顔』(佐藤まどか)

マジックアウト〈2〉もうひとつの顔

マジックアウト〈2〉もうひとつの顔

1巻から1年後、アニアとピュリスは隣国の西端国(オヴェーリア)に留学していました……という序盤を読んだときは、正直拍子抜けでした。のんきに留学?あの状況で侵略も革命も起きないのかと。でも、お楽しみはあとにとっておいた方がいいですよね。西端国の国防長官が腹に一物あり、アニアたちは人質同然の立場であったことがわかり、さらにアニアのそっくりさんが現れると、物語は急速に盛り上がってきます。そして、終盤の脱出劇の見事なこと。
1巻は作者のメッセージありきの設定を追うことに精一杯で物語としての魅力には欠けていたのですが、2巻の後半になって一級の冒険小説として覚醒しました。
ただし、1巻の欠点であった設定の甘さはあまり改善されていません、エテルリアの外の世界は500年前に最終戦争が起きたようなのですが、いまだに文明のレベルが回復していません。エテルリアの科学技術の問題と同様に、文明が停滞している理由が説明されていないので、作者の語りたいことを語るために設定された世界でしかないというところが透けてみえて興ざめになってしまいます。
さて、シリーズは次巻で完結する予定だそうですが、2巻終了時点で平和的解決をはかるための布石が全くないのが気になります。もしかしたら思いっきり悲劇的な結末をみせてくれるのではないかと期待しています。