きみスキ―高校生たちのショートストーリーズ (teens’best selections)
- 作者: 梨屋アリエ
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2012/09/01
- メディア: 単行本
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実際に語られる内容は、友達とジェラート屋にいって、見栄を張って甘くないメニューを注文してさもおいしいようなふりをして見せたり、親から「なに食べたい?」と返答に困る質問をされてもやもやした気分になったりと、なんでもない日常のエピソードをスケッチしたものです。どうにもならないことはどうにもならないし、どうにかなることはどうにかなってしまうという、嫌になるほどのリアリズムにしびれてしまいます。
そのリアリズムが顕著に表れているのは、恋愛面のエピソードです。恋愛に向いている子供はすぐパートナーを見つけられるのに、そうでない子供はいつまでたっても片思いのままであるというどうにもならなさ。最終章でなにひとつまるく収まらないという現実性。この作品に登場する子供たちは物語から見捨てられていて、ただただ現実を生きるしかないのです。
エンターテインメント性の高い物語で楽しませてくれる作家は現代の児童文学界にはいくらでもいます。そんななかで、若い読者の入り込みやすさを工夫しつつ、渋いリアリズムを提供しようとしている梨屋アリエは貴重な存在です。