- 作者: 如月かずさ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/09/13
- メディア: 単行本
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特撮番組が好きで部活にも所属せず友達もなく孤独な高校生活を送っている宇佐清春が主人公。ある日うっかりライダーのフィギュアをめぐってけんかをしている双子に声をかけてしまったがために、その双子の姉であり宇佐の同級生でもある美少女と接触し、さらに彼女の紹介で祖父の遺志を継いで地域振興のためにローカルヒーローショーを企画している先輩と知り合い、とんとん拍子でヒーローの中の人役を引き受けさせられることになります。
前半部分は素直な変身願望が満たされそうな流れになりますが、そううまくいくはずがありません。宇佐は何重にも下駄を履かされてヒーローの地位を手にします。偶然に偶然が重なった出会い、ヒーローのコスチュームが「たまたま」小さかったために小柄な宇佐しか着用できなかったこと、本来バスケ部のエースでリア充の先輩がけがをした引け目から仲間を頼りづらい状況にあったことなど。不安定に重ねられた下駄は、当然崩れ去ることが前提なのです。後半はスクールカーストものになり、非常に居心地の悪い話になります。
最終的な落としどころとして、『カエルの歌姫』の主要なテーマのひとつがまたも浮かび上がってきます。仮面へのこだわり、「X」の表象するもの……、なかなか尻尾をつかませてくれない作家なので、次の作品が楽しみです。