『アンナとプロフェッショナルズ 1 天才カウンセラー、あらわる!』(MAC)

自称「ニューヨークで一番のろま」の11歳の少女アンナ・スマッジが主人公。ジェイコブといういじめっ子に付け狙われていたり、多忙な両親にかまってもらえなかったりと、充実しているとは言い難い日々を過ごしていました。しかし、彼女の人生は運命の出会いを経て一変します。
いつものジェイコブのいやがらせで人に噛みついたという濡れ衣を着せられて、校長の命令でカウンセリング室送りになったアンナ。そこで出会ったのが、20代後半なのに高校生にしか見えない女性カウンセラーのシンクレア先生でした。シンクレア先生と話をしたアンナは、自分には人の話を聴く才能があることに気づき、モモ的能力に目覚めてカウンセラーを目指すことになります。
ところが、友達が作ってくれたカウンセラーとしての名刺をジェイコブが車でばらまいたために、ニューヨーク中の厄介者からアンナの元に相談が押し寄せることとなりました。その中には人間の内臓をスプーンでえぐり出したことのあるおそろしい脱獄犯もいました。さらに、その脱獄犯が犯罪者集団を指導しているミスター・フーという謎の人物の命令でアンナの父親を狙っていることがわかり、アンナの周辺は急激にきな臭くなります。しかしアンナはへこたれず、それぞれ特技を持つ5人の仲間とともに、ミスター・フーに立ち向かっていきます。
子供であっても当然、半人前として扱われることは不本意に感じます、では、手っ取り早く一人前扱いされるためには、職業人として自立すればよい。そんな子供の願望をうまくすくいとった設定の作品です。主人公の劣等感が丁寧に描かれながらも、いじめの描写を下ネタだらけの幼稚園レベルのものにして、深刻になりすぎないように調整しているとろこにも配慮が感じられます。先読みが難しいストーリー展開からも目が離せません。児童読み物としてバランスのとれたすばらしい作品で、アメリカで20もの賞を受賞しているというのもうなずけます。
物語の内容だけでなく、本の小口に絵を描くという手間のかかりそうな遊びがあるのも楽しいです。岸田メルのイラストが翻訳ものにうまく合っていることにも驚きました。