『開店!メタモル書店2 超デキるライバル登場!? 』(関田涙)

「メタモル書店」の第2巻。2巻になったので、設定を確認しながらシリーズの魅力を検証していきます。
主人公は小学5年生の莉央。彼女は開いたページに書いてある動物の能力をコピーできる図鑑を使って妖怪を戦う使命を与えられます。特異なのはその妖怪の設定です。莉央が戦うのは本にならなかった物語に出てくる妖怪です。彼らは誰にも知られなかったことが無念なので、倒されることによって〈おもしろい〉物語として完結させてもらうことが妖怪たちにとっての救いとなります。ただ倒すだけでなく、おもしろくしなければならないというのがポイントです。
2巻には莉央のライバルとして超能力をコピーできる図鑑を持つ未来里が登場します。彼女は強くて簡単に妖怪を倒してしまいますが、すぐに倒すと物語が盛り上がらないので、皮肉なことに高い評価を得られません。いつも一見役に立ちそうもない動物を引いてしまう莉央の方が、ピンチになって物語を盛り上げることができるので、優秀なのです。
作者の関田涙本格ミステリの作家ですから、この設定を「妖怪退治の物語を推理する物語」といいかえてもいいでしょう。つまりこのシリーズは、物語をつくるための物語なのです。ある意味物語として行き着くところまで行ってしまっています。
〈謎とその論理的解明〉というきわめて高度な様式美を確立しながら、常にそれを揺さぶる実験を繰り返してきた本格ミステリは、物語の遊戯性を知り尽くしたジャンルであるといえます。そういったジャンルの作家ですから、こうしたハイレベルな遊びを児童向けに提供しても不思議はありません。
妖怪の物語をでっちあげることが勝利条件になるという、「メタモル書店」に似た趣向の作品は、実は本格ミステリの世界にはすでにあります。ライトノベルレーベルで本格色の強いミステリを出していることで知られる田代裕彦の「セカイのスキマ」シリーズや、今年本格ミステリ大賞を受賞した城平京の『虚構推理』がそれに当たります。しかし「メタモル書店」は妖怪退治よりも物語をつくること自体が目的化しているので、より泥沼にはまっています。ぜひこのシリーズには物語の遊戯性を追求していってもらいたいです。