『女の子の昔話』(中脇初枝)

女の子の昔話: 日本につたわる とっておきのおはなし

女の子の昔話: 日本につたわる とっておきのおはなし

ジュンク堂書店池袋本店で11月に行われたトークセッションで、石崎洋司がこんな話をしていました。武田美穂と組んで「ももたろう」の絵本を出したとき、川に大量の桃を流したところ、これは違うという疑問の声がいくつもあがったそうです。実際は桃が複数流れるバージョンの伝承の方が多く、桃はひとつであるというイメージが流布したのは巌谷小波以降なのだとか。
情報があふれる時代だからこそ、かえって画一化が進んでしまうという現象。多様性を保持することの難しさを感じました。
よみきかせ日本昔話 ももたろう (講談社の創作絵本)

よみきかせ日本昔話 ももたろう (講談社の創作絵本)

さて、そんな反省をしたばかりのはずなのに、中脇初枝再話の『女の子の昔話』を読んで、わたしもおなじような罠にはまってしまいました。最初に収録されているのが「わらしべ長者」なのですが、主人公が女の子であるということに違和感を持ってしまいました。著者の解説によると、岩手では女の子バージョンが伝承されているそうです。
画一性から逃れるのはやはり難しい。だからこそ、中脇初枝石崎洋司のようにそれを攪乱しようとする試みは貴重です。