『ズッコケ中年三人組age47』(那須正幹)

ズッコケ中年三人組age47

ズッコケ中年三人組age47

中年シリーズ新作。那須正幹には自身の女性蔑視・女性嫌悪を露骨に作中に表してしまうという悪い癖があります。この巻がまさにその典型例になっていました。
中年シリーズで著者のミソジニーを主に受けていたのは、いうまでもなく荒井陽子です。前巻での「拾ってくれてありがとう」というセリフや、今回の子供を産ませてほしいと土下座までしてしまう姿勢、ハカセに対する陽子の卑屈な態度をみると、著者がこの結婚を陽子に対する懲罰として設定していることがわかります。自立した女性として生きていた彼女は、その懲罰としてハカセごときと結婚されられてしまったのです。
今巻では出産に当たって、陽子が自分の半生を振り返る場面が出てきます。幾多の男性遍歴・中絶・見合い話を進めている最中もほかの男と関係を持って破局するといったエピソードが語られます。ここからわかるのは、著者がバブル世代の女性にこの程度の貧困なイメージしか持っていないということです。
そんな陽子ですが、妊娠を機に改心されられます。仕事も遊びも結婚前と同じようにしていた彼女は、そのことに良心の呵責を感じていました。そして、「子どもがいれば、自分もいやおうなしに家庭にしばられるし、育児に専念するだろう。妻としてのいごこちの悪さも、母となればどうどうとわが家に腰を落ち着けられるにちがいない」と思い至り、出産を決意します。性的に放縦ながら自立した女性として生きる彼女の人生を全否定し、子供をだしに家庭に縛り付けずにはいられない著者の旧弊的な家族観・女性観には寒気がします。
ところで、モーちゃんの家では飼いネコの出産という地味なイベントが起こります。ここで著者は不吉なひと言を付け加えています。

人間とちがい、赤ん坊の父親を特定するのは、なかなか難しい。もっとも人間の場合も、ときに特定困難な場合もあるが。(p258)

これはどこのご家庭のことをいっているのでしょうか。シリーズにはまだまだ波乱がありそうです。