『子どものための美しい国』(ヤヌシュ・コルチャック)

子どものための美しい国

子どものための美しい国

ポーランド児童文学の不朽の名作の新版が刊行されました。父王の急死によってわずか10歳で即位したマット王の物語です。
幼い王をばかにして隣国が戦争を仕掛けてくると、マットは身分を隠してこっそり前線に出て行きます。馬に乗って敵を蹴散らすような英雄的な活躍ができることを期待していたマットですが、やらされるのはひたすら塹壕堀り。戦争を通してマットは少しだけ現実を学びます。
その後マットは、子供の夢想と大人の現実主義のはざまで葛藤しながら、国中の子供たちにチョコレートを配ったり、子供の議会をつくったりと、独自の政策を推し進めていきます。しかし物語は悲劇的な結末を迎えます。マットの理想が瓦解するさまが非常にシビアに描かれていて、読ませます。