『小学生のための文章レッスン なんかヘンだを手紙で伝える』(村中李衣)

なんかヘンだを手紙で伝える (小学生のための文章レッスン)

なんかヘンだを手紙で伝える (小学生のための文章レッスン)

小学生向けの文章の書き方のレクチャー本の叢書です。が、第1弾が抗議文の書き方で、担当するのが痛みのあるリアリズムに定評のある児童文学作家の村中李衣と、なかなか挑戦的な本になっています。
小学5年生の佳奈がクラスの悩み事を解決するためにお悩み相談所を訪れ、サミュエルくんというハーフのイケメン中学生にレクチャーを受けるという設定になっています。佳奈のクラスでいじめのため不登校になった子供がいたのですが、学級会で多数決でクラスのみんなでその子に手紙を出すという案が決定されてしまいました。その子の友達であった佳奈は釈然としないものを感じつつもどうしてよいのかわからず、お悩み相談所に頼ることになります。悪意のこもった民意の暴走という非常に厄介な敵が設定されています。
サミュエルくんは、自分の目的を明確にしてからそれを実現するための方策を練るように指示します。ゴールを見据ることにより道筋が見えやすくなります。
さらにサミュエルくんは、暗に相手をバカだと思ってあしらい方を考えるように説きます。たとえば学校の先生が生徒に対してたちの悪いいやみを言った場合、思慮の浅い先生であればはっきりと抗議し、神経質な先生であればその場で言っても無駄だからプライドを傷つけないように配慮した手紙を書いた方がいいとレクチャーするような具合。みもふたもないので非常に実践的です。
こういったやり方は子供から人間に対する信頼を奪うという批判もありそうですが、理不尽なことに戦うすべは早い段階で与えておくに越したことはありません。実際に手紙を出すという行動を起こすことのできる子供も多くはないでしょう。しかし、頭の中で事態を整理する方法を心得ておくだけでも助けになるはずです。