『黄色い本』(緑川聖司)

学校の怪談 黄色い本 (ポプラポケット文庫 児童文学・上級〜)

学校の怪談 黄色い本 (ポプラポケット文庫 児童文学・上級〜)

山岸良介という謎の人物が書いた本を巡る怪談シリーズの新刊です。3月刊行予定の次作『怖い本』がシリーズの完結編になるようで、巻末にある次回予告が期待を持たせるあおり方をしています。
『黄色い本』の主人公はシリーズの第2作『赤い本』でも主人公を務めていた岸里ゆかりです。新聞部の活動の一環として市主催の怪談コンテストに応募することになったゆかりは、学校司書の山岸さんから20年前の怪談コンテストの際に学校でつくられた小冊子『黄色い本』を渡されます。作者は当然いつもの山岸良介。ゆかりはまたも本をめぐる怪異の世界に巻き込まれることになります。
以下、最終巻に向けての備忘のため、『黄色い本』『赤い本』『黒い本』の結末をメモしておきます。




『黄色い本』

『黄色い本』のタイトルの意味は警告色であることを知ったゆかりは、放火事件に巻き込まれるが生き延びる。怪談コンテストはこの事件の影響で中止になり、20年前のコンテストも同様の事情で中止になったことがわかる。ゆかりは『黄色い本』を無事山岸さんに返却するが、「一番怖い怪談がのってる本」をリクエストして、山岸良介著の『怖い本』を渡されてしまう。

『赤い本』

ゆかりは新しく引っ越してきた家の屋根裏で山岸良介著『赤い本』を発見し、本に記述された怪談と似た体験をすることになる。最後に家の階段下にある謎のスペースから、真っ黒に焼け焦げた本が発見される。ゆかりは直感的にそれが途中で行方不明になっていた『赤い本』だと確信する。ゆかりは女性司書の山岸さんに黒くなった本を渡す。山岸さんはそれを、学校の七不思議のひとつである肖像画の中の本好きの男の子に渡す(『赤い本』の怪談の肖像画には両親と女の子ひとり、男の子ひとりが描かれている。兄がほしくなった女の子が男の子を絵の中に引き入れたと伝えられている。『黒い本』も同様。しかし、『黒い本』の作中作の怪談では、男の子が男の子を引き入れたことになっている。)。

『黒い本』

若い男性の司書が居る御手洗小学校の図書室で山岸良介著『黒い本』を拾った「ぼく」が、やはり怪談の世界に巻き込まれる。
初読時は『黒い本』の「ぼく」が肖像画の世界に取り込まれ、『赤い本』で『黒い本』を受け取ったのが「ぼく」ではないかと思っていたが、読み直してみるとそう単純ではなさそうである。
『黒い本』の作中作最終章『赤い本』は2パートに分けられている。両パートの主人公は「けんちゃん」や「おばあちゃんのお守り」関連の記述を見る限り作中の「ぼく」のようである。このあとは作中作内の記述しかないので、「ぼく」の安否は不明である。この時点で「ぼく」は本の世界に取り込まれたと読むべきなのであろうか。
『赤い本』第1のパートは、図書室の肖像画が倒れてきて「ぼく」が圧死しそうになる場面で終わる。
第2パートでは、15年後の「ぼく」と思われる人物が司書としてこの学校の図書室に戻ってきて、肖像画の少女から生徒を守る。その際生徒のうわさ話で、『黒い本』を読んだ人間は圧死し、その血によって『黒い本』は『赤い本』になると明かされる。
「ぼく」関連の謎は、最終巻の『怖い本』で解決するのだろうか。
なお、作中で10年前に「リョウスケ」という名の少年が交通事故でなくなったという情報が出ている。