- 作者: 蘭郁二郎
- 出版社/メーカー: 論創社
- 発売日: 2013/01/01
- メディア: 単行本
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『少年探偵王』は照夫という少年を主人公とするシリーズです。解題にあるように古典のトリックを流用したものもありますが、謎の提示の仕方がうまく論理展開も明快で楽しく読めます。なかでも運転手の乗っていない怪自動車が都内を暴走する話がよかったです。
戦後に単行本化された『少年探偵王』では主人公の名前が照夫になっていましたが、確認された初出誌では寺田和彦となっていました。なぜ主人公の名前が抹消されたのか、それを考察した解題が作品に匹敵するくらいミステリじみていて、興味深いものになっていました。戦争が文学に与えた影響を考える上で重要な資料になっています。
少年もの以外では、戦時中に発表された月澤俊平を探偵役とするシリーズものが収録されています。解題によると、戦時中は情報局の圧力によって探偵小説が壊滅状態にあったという推理小説史上の通説を、このシリーズによって覆そうという野心があるようです。