『いろいろのはなし』(グリゴリー・オステル)

いろいろのはなし (はじめて出逢う世界のおはなし―ロシア編)

いろいろのはなし (はじめて出逢う世界のおはなし―ロシア編)

東宣出版から出ている「はじめて出逢う世界のおはなし」という叢書の一冊です。叢書名のわりにふりがなも全然なく、どこに向けて本を届けようとしているのか判然としません。とはいえ、このような奇妙奇天烈な海外児童文学が日本に紹介されるのは喜ばしいことです。
訳者あとがきによると、著者はロシアのポストモダン作家で、この『いろいろのはなし』はロシア初のハイパーテクスト小説であると評価されているそうです。手に負える気がしません。
閉園後の遊園地で園長さんがメリーゴーランドの馬たちにお話を語って聞かせるという形式の枠物語になっています。園長さんは知っているお話を語り尽くしてしまったのですが、馬たちは満足しませんでした。馬たちは園長さんに脇役のことを詳しく語るようにねだったりして、物語を広げていきます。
最初の話、すなわち園長さんの最後のお話は、とんでもないワルガキがわがまま放題した挙げ句、地球とも喧嘩して宇宙空間に飛び出てしまうというものでした。
そこから話が広がり、お菓子屋のご意見ノートに理不尽な書き込みをした犯人を撲殺しようと鉄アレイを持って街を徘徊するお菓子屋の店員や、全身にチョコレートを塗って黒人になったおじいさんや、パンプーシキンという詩人(ロシア人はそんなにプーシキンが好きなのか)に原稿の取り立てをするおばさんなど、多彩な登場人物が入り乱れて物語はどんどん複雑になっていきます。
語り手や聞き手が適宜設定を確認してくれるので、児童向けにわかりやすくしようという配慮はあるようですが、それでも読むのに相当な記憶力と集中力が求められる作品であることは間違いありません。正直なところ作品をきちんと理解できた自信がないので、感想は特に付け加えません。