『おれたち戦国ロボサッカー部!』(奈雅月ありす)

おれたち戦国ロボサッカー部! (ノベルズ・エクスプレス)

おれたち戦国ロボサッカー部! (ノベルズ・エクスプレス)

第2回ポプラズッコケ文学新人賞大賞受賞作。熱烈な織田信長ファンの少年ノブナガが、引っ越し先の三河の学校でイエヤスの率いるロボサッカー部に入部し、ロボカップに挑戦する話です。
主人公を完全に頭がおかしい人物に造形しているところが、この作品のいいところです。ノブナガは信長に心酔するあまり、尾張から三河への引っ越しを「都落ち」であると認識していて、新天地の人々をあかぬけない「三河武士」と呼んでバカにしています。このような主人公を設定することで、作品世界を独自の異常な空間に染め上げているのがうまいです。
ただし、作品全体の完成度は残念なものでした。このキャラ設定から、ノブナガが三河に敗北するというのは既定路線になってしまうのだから、課題はロボカップをエンターテインメントとしてどう盛り上げるのかということになります。しかし、競技の場面が少なくロボットが実際にどのような動きをしているのかをイメージさせる筆力が欠けているため、まったく燃えない話になってしまっていました。
ロボットものでは中松まるはがエンタメ性に優れた傑作をものしています。新人にこの域を求めるのは酷ですが、先行作品と比べるとあまりにも見劣りがしてしまいます。