『シフト』(ジェニファー・ブラッドベリ)

シフト (福音館の単行本)

シフト (福音館の単行本)

人のランドセルの許容量は決まっています。
新しい宝物を手に入れるためには、
古い宝物は捨てなくてはなりません。

高校卒業から大学入学までの休みを利用して、親友のウィンとともに自転車でのアメリカ横断旅行をすることになった少年クリスの物語です。ウィンには虚言癖がありましたが、ふたりは幼いころから一緒に過ごしていました。しかしクリスは旅の最後で、信じられない裏切りにあいます。目的地の直前でクリスが行方をくらましてしまったのです。ウィンの父親にクリスの失踪に関係しているのではないかと疑いをかけられて、クリスの大学での新生活は居心地の悪いものとなります。
ウィンの父親はなかなかの権力者らしく、FBIを動かしてクリスを監視します。FBIの目を気にしながらクリスがウィン失踪の謎を追う話と、自転車旅行中のエピソードが交互に語られる構成になっており、うまく読者の興味を引っ張っています。
人は年齢を重ねていくとともにいろいろなものを得ていきますが、逆に失うものもあります。この作品では失うものに焦点が当てられています。失うことをネガティブにとらえるのではなく、むしろその変化を希望ととらえているところが、YA作品としてよい着眼点です。
ちなみに冒頭のは『かってに改蔵』第4巻第9話「わすれてたとも!!」からの引用ですが、『シフト』のテーマとは若干ニュアンスが異なるかもしれません。