『魔女のシュークリーム』(岡田淳)

周知のとおり、食べ物の描写がすばらしい児童書は有害図書です。またたいへんな有害図書が出てしまいました。間違って夜中にこんなものを読んでしまったら、大変なことになってしまいます。
シュークリームが大好きな少年ダイスケは、公園でカラスと黒ネコからある頼み事をされます。カラスとネコは魔女に『いのち』を奪われていました。それはふつうの百倍の大きさを持つシュークリームの中に隠されているのですが、動物たちはシュークリームが嫌いになる呪いをかけられているので手が出せません。そこで、ダイスケにシュークリームを食べて『いのち』を取り出してほしいと依頼しにきたのです。ダイスケは喜んで承知しました。
食欲に突き動かされた人間は、魔女なんかよりよほど化け物じみています。ダイスケは別に動物を救うことなんか考えずに、美食の官能に突き動かされているだけです。それが動物側から見れば自分たちを救ってくれるヒーローに見えるし、客観的な読者から見れば食欲のモンスターに見えてしまう。このギャップがおもしろいです。
もちろんこの作戦は簡単には成功しません。もう少しというところで魔女に感づかれて、ピンチになります。このピンチを岡田淳らしいユーモアと論理性で切り抜けていくところがみどころです。
低学年向けの作品としては、岡田淳の新たな代表作になるでしょう。