『ロボット魔法部はじめます』(中松まるは)

「だって、見えてしまってんもん。魔法の正体が。そして、自分も魔法を使えるかもしれないってことも。だったら、それを見せつけたいやんか。」

主人公はゲームとパソコンが大好きな小5の少年陽太郎。陽太郎をなぜか敵視する少女美空のせいでゲーム機を先生に取り上げられしまい、ゲーム機を返す条件として「おたくがキモくないこと」を証明しなければならなくなります。日本橋電気街でキモくない女子受けしそうなブツを物色しているとロボットダンスに出会い、なりゆきで美空と「天然魔法少女」のさくらとともにロボカップジュニアのダンスチャレンジに参加することになります。
中松まるはほど、エンタメを教科書通りにしっかり処理できる作家はなかなかいません。軽い気持ちで参加したロボカップで本物に遭遇して挫折、そこから努力してはいあがり、仲間との衝突も乗り越えて全国大会に挑戦するというシークエンスのなんと美しいこと。
しかし、完成されたエンタメとして物語を組み立てながら、中松まるはは簡単には主人公に勝利を与えません。人生は思い通りにならない、他人からは自分の望む評価を受けることはできないという絶望の深さを描いているところ、そしてさらに、その絶望を乗り越えようとする祈りを描いているところに、この作品のすごさがあります。