『ボグ・チャイルド』(シヴォーン・ダウド)

ボグ・チャイルド

ボグ・チャイルド

シヴォーン・ダウド作品はパトリック・ネスが書き継いだ『怪物はささやく』のみ既読。著者が夭逝しているのでもったいなくて積んでいましたが、ようやく手をつけました。
『ボグ・チャイルド』は2009年のカーネギー賞受賞作です。舞台は1981年の北アイルランド。高校生のファーガスは、泥炭の盗掘のために来た湿地(ボグ)で、絞殺された少女の死体を発見します。
少女の謎と、アイルランド独立のためにハンガーストライキをしているファーガスの兄の物語、ファーガスの恋などが絡み合って、物語は進行していきます。
非常にシリアスな題材を扱いながら、読者の興味を引く要素を詰め込んでエンタメ性の高い作品に仕上げています。特に少女の正体については、読者は少なくとも2回大きな衝撃を与えられるはずです。500ページ近い分量を一気に読ませる筆力には舌を巻くしかありません。
また、「この場所はね、すべての悲しみがはじまって、終わるところなんだ」「何世代にもわたって受けつがれる、変わりばえもしない悪意が見えた」のような、象徴的で荘厳な言葉も目を引きます。
この1冊だけを見ても、シヴォーン・ダウドがYA作家として並外れた適性を持っていたことがわかります。早すぎる死が惜しまれてなりません。