『わたしのひよこ』(礒みゆき)

わたしのひよこ (ポプラ物語館)

わたしのひよこ (ポプラ物語館)

学級会で他人のいいところを自由に紹介するというイベントをする場面から、物語は始まります。これは、教員がいじめを煽っているのに等しい行為です。案の定、主人公のひな子は誰からもなにも言われず、自分には存在価値がないのではないかと悩みます。
班活動の調べ学習で近所の神社の調査をすることになったひな子は、ここでも班員からないがしろにされます。ひとりになったひな子は、夜店で売っていたひよこが衝動的に欲しくなり、急いで家に帰ってそのことを訴えます。おじいちゃんから「いきものをかうってことは、命をあずかるってことなんだよ」と言われたひなこは、ひよこに「おまえのことは、わたしがぜったいに守ってあげるからね」と誓います。つまり、はじめから守れないという結末は示唆されているわけです。
ひたすら悪趣味で、絶望ばかり語っている作品です。愛するものを守れず死なせてしまうといった不幸は、この世界にはありふれたものです。この作品はそんな現実を、まったくオブラートに包まず直截に語ってしまいました。非常に鬱度の高い作品ですが、このように現実に向き合わせる作品も必要です。