マルセロ・イン・ザ・リアルワールド (STAMP BOOKS)
- 作者: フランシスコ・X.ストーク,千葉茂樹
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2013/03/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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マルセロは宗教に興味があり、よくラビと語り合っていました。ラビは性欲を理解できないマルセロを、「エデンの園で神とともに歩んでいる」のだと表現します。
この物語を創世記をなぞらえたものだとするなら、マルセロは養護学校という楽園から追放され、リアルワールドという楽園追放後の世界に足を踏み入れたのだということになります。しかし、楽園追放も神の計画だとすれば、マルセロは神の掌の上で踊らされているに過ぎないことになります。そもそもリアルワールドと楽園は対立するものなのか、神の決めたルールは絶対なのか、それすら判然としません。この物語は神殺しの神話となり、現世的にそれは父殺しとして発現されます。
自閉症スペクトラムにあるマイノリティを扱っているという面にばかり注目すれば、この作品を読み誤ってしまいます。父殺しという普遍的なテーマが扱われている作品として理解すべきでしょう。このテーマがしっかりと料理されているので、物語の強度は大変なものになっていました。