- 作者: 梨屋アリエ,こがしわかおり
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/08/01
- メディア: 単行本
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では、そういう子どもたちに対して文学は無力なのでしょうか。そんなことはありません。たとえばこの梨屋アリエの新作『わらうきいろオニ』は、苦しんでいる子どもに的確に手をさしのべる内容になっています。
山奥に住んでいるきいろオニは、友達をつくるために人間の学校に入ろうとします。しかしきいろであることを笑われ、自虐ギャグに走って受け入れてもらおうと試みてもうまくいかず、学校を追放されます。そして、坂道を転げ落ちていくきいろオニ。
「わっはっはっ。ぼくなんて、もう、どこまでもころがってしまえばいい。わっはっはっ。ずっところがりつづけて、ぼくがいなくなったって、だれもかなしむ人はいないだろう。わっはっはっ……。」
ここまで非常に鬱な展開が続きますが、転げ落ちた先にはむらさき色のオニや水玉模様のオニ、あまのじゃくなど規格外の存在が跋扈していて、重苦しい空気が一気に解放されます。
梨屋アリエは坂の下の世界で、逃げるための理論と、逃げた先のビジョンを具体的に提示しています。その具体性が、子どもを救う力となっています。