『スーパーミラクルかくれんぼ!! 四天王だよ!全員集合!!』(近江屋一朗)

かくれんぼの鬼・観頃凜再び!第1回みらい文庫大賞優秀賞受賞作の続編が刊行されました。1巻同様黒田bb四コマ漫画もついた楽しい本になっています。
わずかのあいだに世界で12人しかいない〈黒子(ほくろ)〉という段位にまで上りつめた観頃凜の名声はかくれんぼ界に響き渡り、怪力自慢の〈ゴリラ少女〉として注目の的になりました。もちろんそんな称号が嬉しいはずがなく、しかも〈黒子〉に与えられる着物はその名の通り黒のボツボツでセンスが悪く、凜は不満たらたらです。しかたがないのでもっといい着物をもらうためにさらに上の段位〈四天王〉を目指そうと思っていたところ、都合よく〈四天王〉の1人、金髪美少女のヒナが現れます。
ヒナは凜の師匠の透明が好きらしいのですが、愛情表現が行きすぎるタイプで、透明を拉致して鳥かごに閉じ込め、一緒におままごとをするように強要します。凜は透明を助けようとしますが、敵がかくれんぼの達人だけあって潜伏先がまったくわかりません。そこで、ほかの〈四天王〉の力を借りながら、透明の捜索をすることになります。
〈四天王〉ともなると当然二つ名を持っているし、特技も超能力の域に達していて、1巻に出てくるかくれんぼ関係者以上に奇人変人になっています。その特技を使って魔法の王国を築き上げたり、紙風船をたくさん飛ばして幻想的な光景を作り上げたり、様々な趣向で読者を楽しませてくれます。
1巻からこのシリーズには不思議な懐かしさを感じると思っていましたが、その理由がわかりました。子どものころからかくれんぼの達人たちが登場する話には親しんでいたことを思い出したのです。すなわち、小林少年やポケット小僧や怪人二十面相といった面々です。あの乱歩世界から昭和の闇を取り払って、かくれんぼというゲームの楽しさを抽出したのがこのシリーズであるといえます。であれば、おもしろくならないはずがありません。
ゲームの楽しさという軸があるため、ストーリーはフリーダムに脱線させたり飛び回らせたりすることができます。そのフリーダムがさらに作品全体のおもしろさを増幅させるという、うまい仕組みができています。