- 作者: 赤羽じゅんこ,きむらよしお
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 2013/10/10
- メディア: 単行本
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噺家はよく自虐的に自分たちのことを人生の落伍者といったりしますが、この作品に出てくる噺家も変わり者ばかりです。最初に出会った噺家は、自分から落語を教えてやると声をかけてきたくせにまったくやる気がありません。どうも後輩に後れをとっていてふてくされているらしく、大人げないところばかりみせます。ダメな大人をひとつのロールモデルとして提示しているのがおもしろいです。
非コミュの子どもに無理矢理お笑いをさせるという設定の児童文学は、いくつか例があります。中には傑作もありますが、子どもに社会性をつけさせようという教育的意図が前面に出すぎていたり、子どもに期待するコミュ力が過大すぎたりして、いまいち楽しめないものもあります。
この作品も、実は中盤まではそういった失敗作になるのではないかと疑いながら読んでいました。しかし、最後で主人公は周囲の理不尽な要求を豪快にふっとばしてしまいました。この物語の収束のさせ方は実に巧みです。ラストのカタルシスの強さという点では、今年の児童文学の中でトップレベルになりそうです。