『スターリンの鼻が落っこちた』(ユージン・イェルチン)

スターリンの鼻が落っこちた

スターリンの鼻が落っこちた

2012年のニューベリー賞オナー。スターリン独裁時代のソ連を描いた作品です。
モスクワに住む少年サーシャは、同志スターリンを崇拝する普通の少年でした。しかし、父親がスパイ疑惑で逮捕されてから、彼の日常が瓦解していきます。
全体主義の恐ろしさを伝える作品としては申し分ない内容です。しかしこの作品は、ストーリーよりもイラストの工夫に注目すべきです。
たとえば、118.119ページの、秘密警察が階段を上ってくる場面。テキストとイラストの配置の妙で、ただごとではない臨場感が迫ってきます。
また終盤では、数ページにわたって行列を描いてうんざりするような長さを表現しています。紙一重でギャグになってしまいそうなきわどい表現です。
やはり、テキストとイラストがうまい具合に調和している児童書は美しいですね。