『なんちゃってヒーロー』(みうらかれん)

なんちゃってヒーロー

なんちゃってヒーロー

第52回講談社児童文学新人賞佳作受賞作『夜明けの落語』で昨年デビューしたみうらかれんの第2作。小6の男子が、宇宙怪獣と戦うヒーローを描いた特撮を作る話です。
個性的な仲間がが徐々に集まり、ときに反目し合いながらもひとつの目標に向かって進んでいく流れは、戦隊ものの特撮のようです。『夜明けの落語』とこの新作の2作だけで、みうらかれんはベタな物語をうまく転がす手腕の確かさを見せつけてくれました。
さらに注目すべきは、この作品が高学年の子どもの倦怠感を的確に捉えている点です。主人公のガモーは学校生活にも家庭での生活にも飽き飽きしていて、先生も親も自分も冷めた目で見つめることしかできません。母親に夢を持っていないことを責められると、心のなかで「なにが夢だ。バカバカしい。だいたい、夢なんてのは、寝て見るものだろう」と毒を吐くといった具合。
そんな彼ですから、特撮に取り組むにしても、「なんちゃって」という姿勢を崩すことができません。彼にとっての変身願望は、特撮ヒーローになりたいと願うことではありません。高学年になっても真剣に特撮作りに取り組めるバカになりたいと思うことがすでに、実現の難しい変身願望となっているのです。
熱い特撮の世界と冷め切った心性の対比により、この年頃の子どものリアルが浮かび上がってきます。