『チャーリー・ジョー・ジャクソンの本がキライなきみのための本』(トミー・グリーンウォルド)

チャーリー・ジョー・ジャクソンの本がキライなきみのための本

チャーリー・ジョー・ジャクソンの本がキライなきみのための本

最後の最後になって、どんでんがえしのある本は、おしまいまできみの興味をひきつけておこうと必死なんだよ。
作家として、はずかしいことさ。
だって、もっとはやく終わらせてくれたら、ぼくたちは苦しまなくてすむんだから。

驚くべきことに、まったくタイトル通りの本です。本嫌いな少年チャーリー・ジョー・ジャクソンが、本から逃げ回る話。1章を極端に短くしたり、ところどころに本から逃げるための裏技を掲載したりと、「本がキライなきみ」のための配慮をギャグとして配置しているのが特徴です。最後まで主人公は本嫌いなままで終わり、「本がキライなきみ」を否定しないところが誠実です。
学校の課題でどうしても本を読まざるを得ないときは、友達のティミーにアイスと引きかえに本の内容を教えてもらうことにしていたチャーリー。しかしあるとき、ティミーに契約を反故にされてしまいます。チャーリーはティミーの機嫌をとろうと奔走します。これがどう考えても本を読むよりめんどくさいことになっているのが笑えます。
次のエピソードでは、意見発表会でスクールカーストの研究をすることになります。そのための資料をギーク少年のジェイクに読ませようと画策。ジェイクへの報酬として、スクールカースト上位の少女ハンナと交際させます。これは研究テーマの事例としても利用するつもりで、チャーリーにとっては一石二鳥。しかしハンナはチャーリーの片思いの相手で、失うものはそれ以上に大きくなっています。チャーリーという少年、目的のためには手段を選びません。
いやなことから逃げるためには、大きな代償を払わなければならないこともあります。それでも逃げなければならない局面(たとえそれが一般的にばかばかしいとされていることでも)があるという人生の難しさを、冗談でくるんで描き出してみせたことが、この作品の成果です。