「迷宮ヶ丘 6〜9・0丁目」(日本児童文学者協会/編)

偕成社のホラーアンソロジーの第2期。収録作の中から面白かった作品をいくつか紹介します。

六丁目 不自然な街 (迷宮ヶ丘)

六丁目 不自然な街 (迷宮ヶ丘)

「不自然な街」(伊藤美香)

化け物たちに異世界に取り込まれてしまう話。化け物たちとの意思の疎通が絶対に不可能であるということを印象づけるラストがいいです。

「決めるのは本人だ」(眉村卓

人間をはるかに超えた知性体の実験台にされ、様々な異世界で危険な目に遭う無間地獄に放り込まれた少年の物語。ジュヴナイルSFの第一人者の作品だけあって、思索性とシビアさが突出しています。

七丁目 虫が、ぶうん (迷宮ヶ丘)

七丁目 虫が、ぶうん (迷宮ヶ丘)

「あきちゃった」(山本弘

久しぶりに学校に現れた不登校の少年の正体が明らかになることにより、世界が反転する話。電柱を蹴るという異常行動などで、不気味さや違和感を積み重ねていき、最後に一気に落とすあざやかな手腕にほれぼれしてしまいます。

八丁目 風を一ダース (迷宮ヶ丘)

八丁目 風を一ダース (迷宮ヶ丘)

「風を一ダース」(山本けんぞう)

芸術に殉ずる者の物語。ただただ美しいです。

「暗黒チョコレート」(藤野恵美)「麦の穂が揺れた日」(太田忠司

どちらも、ありえない選択肢を提示することで読者に罪悪感を持たせるタイプの、いやらしい話です。この2作品をラストに続けて配置した編集者の悪意には、戦慄を禁じ得ません。

九丁目 友だちだよね? (迷宮ヶ丘)

九丁目 友だちだよね? (迷宮ヶ丘)

「ころがる玉のその先」(河合二湖)

ころがる玉の先に、どんな運命が暗示されているのか。わけがわからない怖い話です。

〇丁目 奇妙な掲示板 (迷宮ヶ丘)

〇丁目 奇妙な掲示板 (迷宮ヶ丘)

「闇がうごめく」(田部智子)

この巻に限って、すべての作品に「0丁目」という地名が登場するように統一されています。このありえない地名を召喚するために各作家がどのように工夫を凝らしているのか、ここが見所です。田部智子の作品は、オーソドックスな侵略SFで、「0丁目」という空間の出現によって世界が崩壊していくさまが美しかったです。アカツキウォーカーの濁流のようなイラストもあいまって、ストレートに怖い作品になっていました。