- 作者: 星はいり
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2014/02/08
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る
シューズを買うために親からもらったお金で新作ゲームを買ってしまった本川めぐるは、親友の北田あかり・さとし姉弟の助言で、祖父のやっているパン屋でアルバイトをして、横領したお金の穴埋めをしようとします。ところが事前に賃金の交渉をしていなかったため、日給200円という超ブラック労働になってしまいます。これではやってられないと労使交渉をし、自分たちの働きでふだんよりも売り上げが上がった分をもらえるという契約を結びます。これが思いのほかうまくいき、1日に1490円という大金を手に入れてしまいます。調子に乗った三人組は、賞金100万円の創作パンコンクールに目を付け、さらなる一攫千金を目指します。
「ズッコケ三人組」シリーズの愛読者であれば、3ページも読めばこの作品の文体がズッコケの文体に似ていることに気づくはずです。語り手なら当然知っているはずの登場人物の紹介の部分で、「この少女*1、いや少年はせっかちらしい」とすっとぼけてみせるところなど、シリーズで同じような描写を何度も目にしています。登場人物を突き放したドライな語り方は、ズッコケそのものです。
似ているのは文体だけではありません。体験活動的な内容がエスカレートしていく話の転がし方もズッコケですし、オチも、那須正幹だったらこうするだろうなと予想される方向に進みます。
一時代を築き上げた娯楽児童文学の手法を継承しようという強い意志が、この作品からは感じられます。この試みが成功するのか、今後を見守っていく必要があります。