『フローラとパウラと妖精の森1 妖精たちが大さわぎ!』(タニヤ・シュテーブナー)

妖精たちが大さわぎ!

妖精たちが大さわぎ!

「動物と話せる少女リリアーネ」シリーズで大人気の、タニヤ・シュテーブナーの新シリーズ。
主人公のフローラは、お話をつくる才能を持っていてみんなからちやほやされる姉のパウラに劣等感を抱いていました。唯一の理解者は老舗の書店を営んでいる母親で、いつも母親に本を読んでもらっていました。フローラは母親から聞いたエルフが見えるようになる儀式を成功させ、バンブルビというエルフと出会います。変な場所で独り言を言っているので姉からはとうとう頭がおかしくなったと思われながら、フローラは冬眠についているエルフたちを目覚めさせるために奮闘します。
妹からは姉はすべてを持っているように見えますが、当然姉の方は違う言い分を持っているはず。姉妹の確執と和解という身近なテーマを丁寧に描いているので、子どもの共感を得られるでしょう。シリアスすぎず軽すぎもせず、バランスのいいエンターテインメントになっています。
興味深いのは、エルフをめぐる設定です。バンブルビの説明によると、人間がエルフの物語を読むことでエルフは生命力を得られるのだそうです。ところが現在はエルフとフェアリーが混同され、エルフは本来ぼさぼさ髪で短足なのに、フェアリーのようにほっそりして美しい姿だという間違った認識が流布しているため、エルフは生命力を失い冬眠についていて、フェアリーの力が強くなっているのだそうです。
しかし、2人目のエルフの説明では、話はだいぶ変わってきます。フローラが出会ったエルフはフローラの祖母が考えたエルフで、考えた瞬間にエルフが誕生し事後的に400年も500年も生きていたことになったのだそうです。かなり人間中心的な設定で、これだとそもそも彼らのいう正しいエルフの姿の正しさを保証するものがなくなってしまいます。
この作品はどうもミームの闘争を描こうとしているようです。1巻の最後では、間違った方のエルフの侵攻が予告されており、続きがどうなるのか期待されます。