『ネコの目からのぞいたら』(シルヴァーナ・ガンドルフィ)

ネコの目からのぞいたら

ネコの目からのぞいたら

イタリアのへんてこ幻想文学作家シルヴァーナ・ガンドルフィの初期作品の邦訳が、岩波書店から出ていました。ガンドルフィの作品が日本に紹介されるのは、世界文化社の『むだに過ごしたときの島』『亀になったおばあさん』以来約10年ぶりです。これをきっかけに、もっと翻訳が増えてほしいですね。
偉大な詩人と同じ名前を付けられた少年ダンテは、どうもディスレクシアらしく留年の危機に陥っていました。そこで家庭教師のコジモ・ドレンテ先生につくことになりますが、この先生がなんとも型破り。初対面でダンテに無理矢理タバコ(のかたちをしたグミ)をくわえさせるといういたずらをしかけます。先生はダンテにウェルギリウスと名付けられた子猫を譲るという約束をします。さらに、ダンテがウェルギリウスの目を通してものを見られるようになる「遠隔テレパシー」という能力まで与えてくれます。はたして先生はマッドサイエンティストなのか魔法使いなのか大ボラふきなのか……。
序盤はドレンテ先生の魅力が物語を引っ張ってくれます。しかし、すぐに喪失が訪れます。ドレンテ先生は急死し、もらえるはずだったウェルギリウスも行方不明に。ダンテは遠隔テレパシーを使ってウェルギリウスの居場所を探そうとしますが、猫を拾った少女が犯罪に巻き込まれているらしいヴィジョンを見て、探偵じみた活動をすることになります。
中盤のミステリ展開は、よくも悪くもふつうなので、ガンドルフィの作風を知っている読者は物足りなく感じるかもしれません。でも、最後は期待どおりわけのわからないことになります。それまでがふつうだったために、あっけにとられる感が増幅されて、奇妙な読後感を残します。