『亀になったおばあさん』(シルヴァーナ・ガンドルフィ)

亀になったおばあさん

亀になったおばあさん

「死をうまくかわすにはね、エリーザ、変身すればいいのさ」
ヴェネツィアを舞台にした奇妙な味のファンタジーです。
10歳の少女エリーザは、家から30分ほど離れたところにあるエアおばあさんの家によく出入りしていました。ところがあるとき、おばあさんの娘である母親とおばあさんが、けっしてお互いの家を訪れないということに気づき、母親と祖母の過去の確執を知ることになります。やがておばあさんが亀に変身してしまうという事件が起きます。エリーザは誰にも相談することができず、ひとりでおばあさんを守ろうとしますが、水の都ならではの危機がやってきます。
わかりにくい話ですが、ヤギ足の天使のような「神さまを怒らせそうなおもしろい絵」を描いていたり、元女優で芝居のセリフをよく引用したりする謎めいたおばあちゃんの哲学的っぽい話を楽しめれば物語の中に入っていけます。
そして、終盤は映像化したくなるような名場面の連続になります。水の都ならではの危機に対抗するため黒魔術の儀式めいた美しい光景が出現し、最後はおばあちゃんの設定をいかしたバカ騒ぎが起こります。
一見わけのわからないナンセンスストーリーのようで、実は構成がかなりねられているところが憎いです。