『アリス物語』(ルイス・キャロル)

アリス物語 (パール文庫)

アリス物語 (パール文庫)

パール文庫新刊は、菊池寛芥川龍之介の共訳によるアリスです。といっても、この本の刊行時には芥川は自殺していたので、前半は芥川、後半は菊池の訳になっているようです。詳しくはリンク先(PDF)を参照してください。
物語は知ってのとおりなので、パール文庫版ではレトロな訳文を楽しみましょう。たとえば、現在流通している訳で「海ガメもどき(河合祥一郎訳)」「にせ海亀(脇明子訳)」となっているのが、「まがひ海龜*1」と、かっこよくなっています。フラミンゴを使ってのクロッケーは、紅鶴での球打。ハートの女王が焼くのはタルトでもパイでもなく「お饅頭」になっているので、詩もこんな感じになっています。

ハートの女王様が、夏の日一日かかつて
お饅頭をつくりました。
ハートのジャックがそれを盗んで
もち逃げをしました。

海亀スープの詩はこんな具合に。

澤山あって 緑色のみごとなスープ
熱い鉢の中で待つて居る
こんなうまいもの とびつかいでゐらりよか。
(中略)
みごとなスープがたつたの二十銭
この二十銭の為に何を惜まう

たまには古い訳で読むのも、味わい深くていいですね。

*1:パール文庫版では旧かな旧字は改められているので、戻しています。