『ふしぎな国への旅』(メリー=Q=スティール)

ふしぎな国への旅 (1977年) (世界の児童文学名作シリーズ)

ふしぎな国への旅 (1977年) (世界の児童文学名作シリーズ)

1970年のニューベリー賞オナー。翻訳が矢野徹なので、SFの箱に入れておきましょう。
大きないかだで船団を組み、〈もっといい場所〉を目指して地下の川を旅する、いかだ族という奇妙な部族がいました。いかだ族の少年ディラは、いかだが同じ場所をぐるぐるまわっているだけだということに気づいてしまいます。ひとり地下から脱出したディラは、いかだ族の秘密を知っている〈かしこい人〉を求めて外の世界を旅します。
地下の世界にはなかった〈みどり〉などの美しさに目を奪われながらも、ときどき安全な地下が懐かしくなったりもするディラですが、なかなか求める〈かしこい人〉に巡り会うことはできません。山でひとりで生活している仙人のような人物に出会いますが、実は孤独に耐えられない人でディラを監禁しようします。そこから逃げたらカルト宗教のコミューンのようなところにたどり着いて洗脳されかけ、さんざんな目に遭います。
知恵を求める若者とそれに応えられない大人、単純化された設定の中で若者にとって非常に切実なテーマが浮かび上がってきます。