『摩訶不思議ネコ・ムスビ12 はるかなるニキラアイナ』(池田美代子)

見よ、このいっちゃんさんの神々しいまでの主人公オーラを!2007年に始まり約6年半も続いた「摩訶不思議ネコ・ムスビ」が、堂々完結。
序盤から冥府王ニーズヘグ、ヘル、カズチくんらの激しいバトルが展開され、もう生き残れるわけないだろうという絶望感にさいなまれます。そしていよいよ冥府神アブラフタスが登場。物語は神話の領域に上昇し、いつみは人の身では到達しえない絶望を知ることになります。
血しぶきとどろどろが満載の暴力性、ニキラアイナ・ラグナロータ・アブラフタスといった固有名詞に表れているオカルト趣味、そして児童文学らしい上品さ、この三つの要素の奇跡的調和により、池田美代子にしか描けない極上の児童向けエンターテインメントとなっています。
長いシリーズが終わってしまうことの寂しさと、すばらしい物語に最後までついていくことができたという喜び、読了後は心地よい幸福感に浸れます。