『机の上の仙人 机上庵志異』(佐藤さとる)

机の上の仙人―机上庵志異

机の上の仙人―机上庵志異

バーイラストがすばらしいですね。「ぼくの机はぼくの国」ですから、机上に原稿用紙があれば、それは世界のすべてです。それをセピア色に封じ込めたなら、そこにはいくらでも想像力をのせることができます。ミニチュアの中にこそ広大な世界を見出す佐藤さとるの思想をみごとに再現した装丁です。
ゴブリン書房が『机の上の仙人』の新装版を出しました。『宇宙からきたかんづめ』に続いてこれを復刊するとは、ゴブリン書房の人はよくわかっています。
『机の上の仙人』は、清代の怪奇談集『聊斎志異』の翻案です。机上の小さな庵に住んでいる小さな仙人机上庵方寸が、机の主の作家に舞台を日本に移し替えた『聊斎志異』の話を語って聞かせるという趣向になっています。
聊斎志異』が元なので話は不条理なものばかりですが、仙人の語りと聞き手の作家の期待によって細やかな人情味も追加されています。岡本順のイラストも、その人情の世界に彩りを添えています。
郭噺や、鬼と人間が結婚して子どもを作る話など、佐藤さとるのイメージとはちょっと違う色っぽい話が多いのも、この作品の特徴です。
今回の復刊で、さらに多くの読者を獲得してもらいたいと思います。