『ブルーとオレンジ』(福田隆浩)

ブルーとオレンジ (文学の扉)

ブルーとオレンジ (文学の扉)

ブルーと名乗る小5の男子が前半の語り手、オレンジと名乗る同じクラスの女子が後半を務める形式の作品です。主人公がわざわざ仮名を名乗るような自覚的な語りの作品になっているところがミソです。
どちらも頭のいい子どもで、クラスにはピラミッドのようなカーストがあることや、いじめのあるクラスには団結力が生まれることなどを見抜いてしまっています。この作品における学校は、もはや笑うしかないような地獄になっています。
ふたりの子どもは、それぞれ自分なりの武器を見つけ利用することでクラスのいじめを解決しようとします。しかし作者は、ふたりをあざ笑うかのように失敗に導きます。終盤の展開は不条理の連続で、読者は乾いた笑いを浮かべることしかできません。不条理の一例を挙げるなら、いじめの主導者の女子は吊しあげられたのに、男子の方の主導者はイケメンだったので追求を免れるなど、いろいろひどいです。
作者の福田隆浩は学校の教員ですが、このような作品を読むと実は学校解体論者なのではないかという疑いが持たれます。学校というシステムにも、その成員の児童にも教員にも、何ひとつ期待していないようにみえます。学校でいじめが生まれるのは必然であるかのような絶望が吐露されてます。その絶望を哄笑に変換したことが、この作品の成果です。