『夏の魔法 ペンダーウィックの四姉妹』(ジーン・バーズオール)

夏の魔法: ペンダーウィックの四姉妹 (Sunnyside Books)

夏の魔法: ペンダーウィックの四姉妹 (Sunnyside Books)

子どものころ、たとえばネズビットやリンドグレーンのような児童文学が好きだった人、あるいは松田瓊子のような少女小説が好きだった人は、騙されたと思ってこの本を読んでみてください。あなたがむかし愛してやまなかった世界と再会できるかもしれません。
いつもチョウチョの羽を背中に付けている4歳児のバティ。妄想癖があり、なにか突飛なことを言うと家族から「ああ、いつものアレね……」とあしらわれる、小説家志望の10歳の少女ジェーン。直情径行でトラブルを招き寄せるタイプだが、数学という高尚な趣味を持っている11歳の少女スカイ。まだまだやらかしたい年頃だけど、自由すぎる妹たちを統率するため常識人のポジションを担当している12歳の長女ロザリンド。この四姉妹が、思いがけず広い庭のあるコテージで夏の休暇を過ごす話です。
そこで出会った男の子と友情をはぐくんだり、その母親と確執が生まれたりというストーリーのラインはありますが、そこはさして重要ではありません。適度に仲がよく適度に仲が悪い姉妹がわいわい言いながら遊んでいる様子をただ眺めるのが、この作品の楽しみ方です。車の中で暇つぶしに言葉遊びをしたり、会議ごっこをしたり、脱走した小動物を追いかけたり、特殊ルールでサッカーをしたり、それだけのことが、幸福感たっぷりに描かれています。これこそ正しい児童文学といった感じの作品です。
驚くべきことに、この作品が刊行されたのは2005年、つい最近のことです。それなのに、何世代にもわたって愛されてきた名作児童文学のような風格を持っています。