『戦国ベースボール 信長の野球』(りょくち真太)

戦国ベースボール 信長の野球 (集英社みらい文庫)

戦国ベースボール 信長の野球 (集英社みらい文庫)

このタイトルだけでも釣り針としては充分なのに、帯に打線が書いてあるのですよ。1番豊臣秀吉(右)2番島津善久(中)3番毛利元就(遊)といった具合に。ここを見ただけでも、真田幸村と信之が別チームにわかれているというような仕掛けに興味を引かれます。これはもう釣られるしかないでしょう。
http://miraibunko.jp/special-book/archive017/
登場人物紹介欄では、それぞれの武将にキャッチフレーズがつけられています。「3番・ショート・折れないチームプレー・毛利元就」「6番・キャッチャー・粘りの名人・徳川家康」など、武将の特徴を強引に野球にこじつけています。そのなかでシンプルに、「4番・ファースト・魔王・織田信長」の説得力の強さが、また突出しています。
はじめの1ページで、戦国武将たちが地獄で平和的に覇権争いをするために野球をしているという設定説明が簡潔になされます。この設定をおもしろいと思わない読者はここで切り捨ててかまわないといういさぎよさがよいです。
戦国武将たちが史実や伝説を元にした特技を使って、お笑い野球対決をするというのが物語の内容です。真田幸村が十文字槍型のバットで突きの体勢でヒットを打つが、兄の信之が一塁を守っているので譲り合って塁を踏めないとか、すばらしく頭が悪くて愉快なギャグが満載になっています。
ゴールデンウィークに現実を忘れて楽しむにはぴったりの作品になっていました。