- 作者: ウィリアム・アレグザンダー,斎藤倫子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2015/04/12
- メディア: 単行本
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ゾンベイ市という街に孤児を集めて下働きをさせている魔女グラバがいました。主人公は魔女に支配されている孤児の一人ロウニー。街で禁止されているゴブリンの仮面芝居の一座に出会ったロウニーは、魔女の家から失踪した兄ロウワンの行方に関わりそうな情報を入手し、危険な芝居の世界に接近していくことになります。
本を読み始めてまず目につくのは、魔女の造形です。移動する家に棲み、ニワトリのような脚を持っている魔女の姿からは、バーバ・ヤガーが連想されます。しかし、魔女の脚は歯車を使用した機械仕掛けになっていると、独自のアレンジが施されています。魔女だけでなく街の警備隊員の脚も機械仕掛けになっていて、ファンタジーとスチームパンクっぽさが融合したような興味深い世界設定になっています。
仮面や演劇・川の氾濫といったモチーフからはどうしてもアレゴリーを読み取りたくなりますが、それは二の次にしてかまいません。その前に豊かなイメージの奔流を楽しむべきでしょう。これは確かに、ル=グウィンが褒めたのもうなずける、力を持ったファンタジーになっていました。